実力主義社会を考える

今、実力主義がすごくいいことのように言われている。これって、本当に実力のある一部の人以外にとってはものすごい恐怖だ。終身雇用制、年功序列、たしかに効率は悪い。でも自分の能力に言い訳ができた。昇進できないのは制度のせいであって、能力がないせいじゃない。それによってどれだけの人の心が救われてきたのか、数で示すことはできないけれど。完全実力主義社会になったら、言い訳が一切できなくなる。平社員の40歳は、「自分は無能です」と宣伝しながら仕事しているようなものだ。評価されないと、同期がどんどん自分より上になる。後輩から命令される。仕事で評価されることと人間性とが結び付けられ、それにしか価値が見えなくなる。すごく殺伐とした仕事場になるんじゃないか。評価に対する一種の諦めが、和やかさを生み出していたはずなのに。
効率をとるか、心の安定をとるか。社会は前者に傾きつつある。